近藤さん、こんにちは!!矯正治療用のインプラントのご質問ありがとうございます。 インプラントを使った場合とインプラントを使わない場合を比較して考えられているようですが、この他にヘッドギアーというご自宅で装着してもらう器具もあります。
まず、インプラントですが、これは骨に直接ネジのような形をした体に害のない素材でつくられた「インプラント」を埋め込みます。歯は力を加えれば、移動してしまいますが、このインプラントは力を加えても移動する事はありません。この性質を利用して、歯と歯を弾力性のあるゴムやスプリングでつないで移動するのではなく、歯とインプラントをつないで歯を移動するわけです。
例えば、犬歯の後ろの第一小臼歯を抜歯して、犬歯1本と抜歯した歯の後ろの歯(第二小臼歯、第一大臼歯、第二大臼歯の3本)をゴムでつないでおくと、犬歯が抜歯した部分へ移動して行きます。しかし、抜歯した部分より後ろの3本の歯も全体に少し前方へ移動してしまいます。つまり、単純化して考えてみると、抜歯したスペースが8mmあったとすると、犬歯は6mm後退しますが、後方の3本も2mm前方移動してしまうという事です。 一方、犬歯と奥歯3本をつながないで、犬歯とインプラントをつないで犬歯の移動を行うと、奥歯は前方移動しないので、抜歯したスペースの8mm全部、犬歯を後退できると言うことです。つまり、インプラントを使うと奥歯を前方へ移動しないで、前歯を抜歯したスペースを全て後退できるということになります。
では、ヘッドギアーはどういう働きをするのでしょう?かぶる装置なので、患者さんによっては毛嫌いされることもあるのですが、この装置を一生懸命使っていただくと、奥歯を後退することができます。 つまり、抜歯したスペース以上に犬歯を後退することも可能という事です。また、奥歯の高さもコントロールする事ができますので、毎日装着する面倒くささを「がんばって」さえいただければ、インプラントよりも前歯を後退できることもあるわけです。
私の場合は、ヘッドギアーが最初の選択になります。どうしても時間がなくてヘッドギアーを使用できない方にはインプラントを使用する事が多いです。 実際に大人の女性の患者さんでも、すごく頑張ってくれて、私も本人もびっくりするくらい上下の前歯を後退できた人もたくさんいらっしゃいますヨ。「自分の努力でここまで前歯が良くなった」という事もその方の治療後の大きな自信につながり、拝見していてとても充実感があります。
ここまでは、出てしまた前歯を後退する方法についてご紹介してきましたが、前歯が出てしまった原因を除去する事もとても大切なことです。多くの患者さんで、口で呼吸する癖や舌を突き出して飲み込む癖がある事が多いです。この癖は、練習で治すことができます。私の診療室では、口腔周囲筋機能訓練法(MFT)を行って、前歯が突出する癖を治す事から始めます。インプラントではこの癖を治すことはできません。
このようにネットでは、インプラントさえ打てばなんでもできるように書いているかも知れませんが、そんな簡単なものでもないのです。ネット上での情報収集も良いと思いますが、ぜひ矯正の専門医にも相談してみてください。きっと、あなたの症状に最も適した治療方法を一緒に考えてくれるはずです。インプラントだけが治療ではありませんよ!! また、解らないことがあれば、書き込みお待ちしております。
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