ともぞうさん、的確なご質問ありがとうございます。 骨格性の反対咬合の治療には、おっしゃるように下顎の成長に対する評価が非常に重要です。このため、治療は成長の評価を行いながら、仕上げの時期を見定める必要があります。
身長の伸びだけ見ると、女性の場合は小学校5年生から6年生にかけて身長の伸びのスパートがあり、中学校に入ると徐々に成長量が低下し始め、高校生になるとほとんど身長の伸びがなくなるのが通常です。
しかし、男性の場合には、小学校6年生くらいから急激に身長の伸びるスパートが始まり、中学校1年生、2年生あたりでピークを迎える子が多く、女性より1年から3年も遅く急激な成長が始まります。また、男性の成長のピークにはかなり個人差があり、高校生になってから急激な身長の伸びのある子も少なくなく、大学生になっても、まだ身長が伸びている場合もあります。私の経験では、19歳を越えてから、下顎の成長のために治療した咬み合わせが、また反対咬合へ戻ってしまった症例も大学病院で経験しております。
このように、男性の成長のピークにはばらつきが多く、20歳近くまで身長が伸びる場合がある事が、ともぞうさんの最もご心配な点と思います。
下あごの成長はこの身長の伸びに少し遅れてほぼ連動して起こる事が報告されていますので、単純に考えれば、成長が終わる20歳を待って仕上げのマルチブラケット治療を行うのが理想的かも知れません。
しかし、小学校2年生から治療を始めて、20歳になってから仕上げのマルチブラケット治療を行う事を、ご本人とご両親の納得が得られる場合の方が少ないのではないでしょうか?可及的に治療期間を短くすることも、我々矯正歯科医の重要な仕事です。
さらに、急激な下あごの成長のコントロールはそれほど簡単なことではなく、むしろそれ以前の小学生の時期に、成長のピークを予測して上下のあごの成長を正常な軌道にのせるという準備の方が大きな意義があると考えています。
つまり、成長の途中であっても、積極的に歯車をガッチリと噛み合わせるようなイメージで、しっかりと咬める上下の歯の咬合(咬み合わせ)を整え、上下顎の成長のバランスをとるという考えも非常に有意義なことと思います。
ここまでお読みいただければ、中学校2年生の男性でも、咬合を整える意味があることをご理解いただけるのではないでしょうか?
どの時点で、矯正歯科学的な歯の移動を行って、成長に介入するのか? マルチブラケット治療は単に仕上げという意味だけでなく、残ったあごの成長のバランスを整えるとるという意味の方が大きいという事をご理解下さい。
1 今、装置を付けるメリットはあるのか >今後のあごの成長を正常な気道にのせるために、緊密な咬み合わせを作ることには、大きな意味があります。
2 もしつけた後で顎が成長してきたらどうなるのか >もちろん、そういった事態もあり得ます。しかし、現時点でマルチブラケット治療を行わなくても、同じ結果となるでしょう。むしろ、そのような事態を回避するために、タイミングを計ってマルチブラケット治療を行います。残念ながら、今回行ったマルチブラケット治療の結果が維持できなければ、下あごの成長の終了後に再治療を行います。この再治療の中には、外科的矯正治療も含めて検討する必要があります。
3 付ける時期をこちらが希望してもよいのか >もちろん、患者さんの希望はどんどんお聞かせ下さい。しかし、担当されている矯正歯科専門医の知識と経験に基づいた判断を妨害しないようにお願いします。
4 受け口の場合の最適な装置を付ける時期は? >一概に判定するのは非常に難しいです。患者さんの症状によって、下あごの成長方向、成長のピークと成長量、歯とあごの大きさのバランスを判定して、患者さん個々に判断する必要があります。 以上、長くなりましたが、また解らないことがありましたら、書き込みお待ちしております。
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