ろくすけさん、歯列矯正と扁桃線の関連についてのご質問ありがとうございます。 大きな扁桃腺が不正咬合の原因となっていると考えられる症例は確かにありますね。
歯の位置はどのような要素で決定されるかと言うことから話しを始めなければなりません。
あご自体の位置も歯の位置や不正咬合と密接に関連していることは誰でも解ると思います。あごの位置の異常からくる不正咬合は、「上顎前突」や「下顎前突」などの前後的異常と咬み合わせが浅く奥歯が当たっているのに前歯が咬み合わない「開咬」、下の前歯が見えないくらい咬み合わせが深い「過蓋咬合」などの上下的異常があります。
また、歯並びはこの上下のあごの位置の異常とは別の原因で起こっている事が多いです。 つまり、上のあごの大きさと上の歯の大きさがアンバランスな場合には、歯の生える隙間が足りなくなって歯並びが悪くなります。下のあごと下の歯の大きさの場合も同様で、歯の大きさよりあごの方が大きい場合には「すきっ歯」になります。
これには、上下の前歯の位置も歯並びの善し悪しに関連している事があります。たとえば、前歯が出ている場合には歯が並ぶスペースが拡大されて多少歯が大きくても、歯並びが良い事があります。逆に前歯が内側傾斜していると、それほど歯が大きくなくても歯並びが悪くなる事があります。
これらの歯とあごの位置の異常のほかに、呼吸や咬む力、舌や唇の筋肉などの機能的要素を考え合わせなければなりません。
特に口呼吸などが長期間続くことによって、下あごは後方回転しながら後退し、上のあごの幅は狭くなって、上の前歯が飛び出る「上顎前突」となることが知られています。 いつも口を開いていることによって、鼻から下が長く、唇が足りなくなっていつも口を開き、上の前歯が飛び出ているのを「アデノイド顔貌」という場合もあります。 このアデノイドというのは扁桃腺の一部の名称で、扁桃腺に異常がある場合に特徴的な顔の形といことです。
つまり、アデノイド(扁桃腺)が大きいと、口呼吸を誘発し、下あごが後方へ回転して後退し、これが上顎前突の原因になりますよ!と言うことです。 骨格の形態が下あごの大きい反対咬合の場合でも、下あごが後方へ回転するので、前方への突出具合は少なくなりますが、舌も前方へ押し出されて、上下の前歯がともに前方へ傾斜するタイプの場合は、この舌の前方突出を止めなければ、反対咬合の治療はとても難しくなります。
これが「舌を正しい位置にするためのトレーニングも必要だが、扁桃腺が大きいために舌が収まるところに収まらず、歯を常時押し出しているような状態なので、扁桃腺を切除した方がよい。」という理由です。
一方、耳鼻科の先生に言わせると、 1.アデノイドを含む扁桃腺群は呼吸によって外部から入ってくるバイ菌などを防御する第一砦なので、そんなに簡単に取るべきではない。
2.さらに、小学校高学年から中学生にかけて、扁桃腺が一番大きくなる時期にあたり、大人になると半分くらいまで縮小するため、わざわざこの段階で取る必要はない。
3.扁桃腺の手術は切除する部分の性質上、どうしても出血量が多く、できれば手術したくない。
と言うのが本音のようです。 唯一、扁桃線が大きいために頻繁に高熱を繰り返したり、全身的な問題に波及する危険が大きい場合にのみ切除しましょうと言う考えです。 つまり、上下のあごの位置に対する影響や舌の位置にはあまり重点をおいてくれないのが現状です。耳鼻科の先生のよっては、我々矯正歯科医の意見を取り入れてくれて、お願いすれば、扁桃腺の手術をしてただける先生もいらっしゃいます。
我々矯正歯科医からすれば、原因の除去なしに治療の成功はないワケですから、あまりにもこの扁桃線の問題が大きい患者様には、やはりこのことは申し上げなければならないので、今回のようにご両親がご判断に迷うような事が起こってしまします。
耳鼻科の先生がおっしゃっている事に重点を置くのか、それともあごや舌の位置を改善することを重要視するのかは、患者さん次第です。
かなり難しい選択と思いますが、担当医と良く相談されて、最終的な決定をお願いします。 少しでも、現状の理解のお役に立てれば嬉しいです。また、わからない事がありましたら、書き込みお待ちしております。
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