まりさん、こんにちは!リテーナーの装着についてのご質問ありがとうございます。 お返事が遅くなって恐縮です。 以前にも書きましたが、その先生によってリテーナーの装着方法や期間は様々です。
まず始めにリテーナーについてご理解いただきたい事があります。 それは、歯を移動するためのマルチブラケット装置とは異なって、リテーナーは歯を一歩も動かさないという装置ではありません。ゆるくホールドして、自然の調節機構を阻害しないようにした装置です。 これは、我々矯正歯科医が歯を移動して、スペースを閉鎖し、前歯を目標とした位置に置き、上下の歯をしっかり咬ませた位置が、その患者さんにとって最も良い位置であるとは限らないという、一歩下がった考え方によります。おおむね良い位置であるとは思いますが、もっと楽に、筋肉や周囲の組織と調和して咬ませるようにするには、やはり自然の調節機能も活用する必要があると考えています。従って、我々が決めた歯の位置が最も正しいとは必ずしも言えないのです。 このため、マルチブラケット装置を撤去した後は、歯の位置が微妙に変化します。厳密に言えば少し傾斜したり微妙に隙間が開いたりするのです。これらの変化の中で、極端なものや好ましないものを「後戻り」と言います。 まりさんの少しの隙間はこの自然の調節機能ではないでしょうか。従って、咬み合わせもそこそこ良いのであれば、歯を移動した位置が生理的にも問題ない位置であるという事ですから「諦める」のではなくて「喜ぶ」べきでしょう。
私が食事中でもリテーナーを装着していただいているのは、食事中の歯の揺れを生理的範囲内に押さえるためです。矯正治療していない方でも、食事中には歯が1000分の3から7mm程度は揺れている事がわかっています。しかし、矯正治療を行なった後の歯は1000分の10から20mm程度揺れる事が知られています。この揺れが大きくなり過ぎないように、食事中もリテーナーを装着した方が良いと考えています。
矯正治療は、機械的に目標とする歯の位置へ移動する「動的治療」と、生体に新しい歯並びをなじます「保定期間」があるとお考え下さい。これが、一番体に良い矯正治療のような気がします。
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