Lisaさん、ご質問ありがとうございます。 歯並びが悪いことや咬み合わせが悪い患者さんの気持ちをあまり理解できない、偉い歯医者さんが、たまにこういう発言をされているのを拝見します。 つまり、矯正治療は必要ないと言う事ですネ!
「かみ方を含め身体のさまざまなシステムが完成されている成人に対する歯列矯正は、こうした副作用ともいえるリスク(危険性)がある」という事は、我々矯正歯科医はいつも頭の片隅にあります。 しかし、歯並びが悪くて、歯磨きが上手くできず、歯医者でも十分な歯の周囲のクリーニングが出来ずに歯周病(いわゆる歯槽膿漏など)が徐々に増悪して行くのは、黙ってみている方が良いのでしょうか?黙って抜いて、入れ歯にするのが良いのでしょうか? Lisaさんは、外科矯正をされると言う事ですが、これまでいろいろ悩んだ末に、手術のリスクを犯しても、やっぱり治したいと決断されたワケですよね!矯正治療は必要ないと言っている先生に、Lisaさんの治そうとする気持ちはきっと解らないと思いますよ!
人間の歯は一見皆大きさや形が違うように見えて、日常的には大して気にも留めていないと思いますが、上下の歯は非常に精密な歯車のような機能を持っています。つまり、何番目の歯のどこのデッパリが、どの歯のどこの溝に咬み込むか、精密に決まっています。 これは、歯学部の入れ歯の実習の最初に教わり、人工の歯をワックスの上に排列して、しっかり咬ませる事を教わります。 矯正治療はこの歯車のように精密な上下の歯をしっかりと咬ませて「良く咬める」ようにする事が最大の目的です。見かけを治しているのではありません。これは、ピーナッツを奥歯で粉砕する時には70kg、リンゴをまるかじりすると40kgとも言われている、歯にかかる非常に大きな力をしっかりと上下の歯で受け止めて、あごの関節や筋肉に負担を軽減するためです。
また、この文章では「成人の完成したシステムは変化しない」かのように書いてありますが、これも嘘です。人間の体のシステムは成人に達した以降も成熟し、そして老化に備えて順応あるいは常に変化に対応していると我々は考えています。 事実、矯正治療は昔は子供の治療でしたが、今では我々の患者さんの半分は成人です。 しかし、これらの多くの成人の患者さんで、矯正治療の副作用が出現した経験は今の所ありません。成人の患者さんも、多少時間はかかりますが、新しい歯の位置やあごに対して十分な順応性があります。
以上をふまえて、賢明なご判断をお願いします。
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