ご質問ありがとうございます。担当医を変更する問題点は大きく分けて三つあると思います。 一つ目と二つ目は治療目標と治療プロセスの問題です。治療を開始して2年であれば、そろそろ仕上げの時期になっていると思います。歯のでこぼこもなくなり、上下の咬み合わせもほぼ咬み合って、歯と歯の隙間もほとんどないか、あと少しの状態でしょう。 しかし、ここまで来るまでには色々な事があったと思います。前歯はどの程度出たり引っ込んだりしていたのでしょう? 咬み合わせの深さはもともと浅かったでしょうか?深かったのでしょうか? 途中でゴムはどの程度使って、どのくらい移動したのでしょう? また1か月でどのくらい歯が移動する方なのでしょう? 歯の移動する時の痛みはどうだったのでしょうか? 歯ブラシなどの清掃は? 咬み癖や歯に悪い癖などはなかったのでしょうか? このように、現在の歯の状態だけを診せていただいても解らないことだらけです。矯正治療は治療のそれぞれの時期の状態よりも全体の移動のプロセスが重要で、仕上げの段階で「咬み合わせが浅いな」と思っても、それは初診時には「深かった」ので装置撤去後のことも考えて、わざと浅くしているものです。 さらに、患者さんは皆同じではなく全員違うし、不正咬合の状態も全員違います。これに対するドクター側の対応も少しづつ違いますので、その患者さんの治療過程はそんなに簡単に理解できるものではありません。 三つ目は料金の問題です。矯正治療は今日行った処置に対していくらと言う対価をいただくような治療ではなく、最終的な仕上げに向けて今日何をすべきか?という一連の歯の移動過程に対してお金をいただいていると考えています。従って、最初に契約料金や装置/技術料として数十万円の料金をいただき、毎回の来院の際に、数千円の処置料をいただくのが一般的と思います。 転院の際には現在までの治療段階を評価して、最初にいただいた数十万円から、これまで行った治療分を差し引いて、残金をお返ししなければなりません。しかし、現在かなり仕上がっているのであれば、この大きなお金の大部分は返却されないと考えるのが普通です。 さらに、新しく診てもらうドクターにはこの契約料金や装置/技術料を払わなくて良いかというと、それもある程度は必要です。歯に装着しているブラケットのメーカーが違ったり、装置をつけている位置が違うと、私の場合は全部の装置をつけ治して治療のステップを少し戻ってやり直すのが普通です。転院によって、患者さんにすれば二重に支払わなければならない部分も出て来る事になります。 長々と書いて来ましたが、私の患者さんのうち、電車や車で数時間の通院可能な方は当院へ引き続き来ていただいております。このように、矯正治療の場合は一連の治療という性質上、通院可能であれば多少遠くても最初に診てもらった先生の診療室に通院された方が無難と思います。それでも、転院したい理由があれば話は別ですが。
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